SLT治療(緑内障レーザー治療)

今回は緑内障のレーザー治療、選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)治療について書いていきたいと思います。

緑内障の治療は眼圧を下げることです。眼圧を下げることで視神経のダメージを防ぎ、視野(見える範囲)を守ります。以前も眼圧についてお話しましたが、毛様体から生産された房水が虹彩と角膜のなす隅角と言われるところにあるシュレム管から排出される流れが滞ると眼圧が上がります。滞る原因の1つがシュレム管の前にある排水溝の役目の線維柱帯にあります。

緑内障と診断された人は、まず眼圧降下作用のある点眼治療から始めます。1種類の点眼から始め、経過観察の中で進行がある場合は2本、3本と点眼本数が増えていきます。たくさん点眼をしているとうっかり忘れてしまったりして、うまく使えてないかもなあと思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。ドライアイや花粉症は点眼薬の効果を感じますが、緑内障の場合、自覚症状は乏しく緑内障の点眼薬をさすことで充血したり、痛痒かったり、睫毛が伸びたり、色素沈着したりと、副作用ばかりで点眼は本当に意味があるのかという声を聞くことも多い印象です。

最近新しい治療の1つとしてSLT治療が比較的安全にできる治療として普及しています。長年、緑内障治療の第一選択であった点眼薬治療ですが、SLT治療で眼圧下降が維持できれば点眼治療をしない期間をのばしたり、点眼本数を増やさず経過観察を行えます。

SLTは排水溝の役目している線維柱帯に詰まった細胞のカスだけを選択的にレーザーで蒸発させ流れを良くさせます。また、SLTは詰まった細胞のカスだけにレーザーが選択的にあたるので線維柱体自体には損傷は与えないので何回も受けることが出来ます。

そう聞くとすごい治療だ!点眼ではなくレーザーをしたい!と思うかもしれませんが、残念ながらSLT治療をおこなっても眼圧が降下しない方もいます。SLT治療を行えば必ず眼圧が降下し点眼せずに済むか?と問われたら、そうではないのも事実です。レーザーをして、視野の経過を見て効果が出ているかをみていくことになります。また、緑内障のタイプ、視野異常の程度など緑内障の病状の進行具合によっては適応にならない場合もあります。

SLT治療での眼圧降下は10-30%程度期待できると言われており、効果の持続期間は1年で約60%、2年で約50%、5年で約30%です。2~3年で半数近い方に効果を感じられなくなり2回目のSLT治療を行うか、点眼治療を強化するかを判断していくことになります。

レーザーの治療費は1回、1割負担の方は1万円程度、3割負担の方は3万円程度となります。点眼薬治療の場合、緑内障の点眼薬は1本(1ヶ月分)3割負担の方は千円程度です。それを考えると、3年間、点眼薬1種類をさし続けると単純計算で3万6千円。

またSLTは日帰りで行うレーザー治療(手術)で手術給付金付き医療保険では給付金支給の対象になることがあります。

以前の緑内障の治療は点眼薬だけでは進行が抑えられない場合は手術を考えるという流れでしたが、このSLT治療は点眼と併用し初期から中期に検討される新しい緑内障の治療です。

SLT治療の適応は

視野に緑内障による初期の変化が出ていて、点眼治療を始める前にまずSLT治療を試す。

点眼治療を始めているが視野の悪化があり、点眼薬を増やす代わりにSLT治療を試す。この場合効果が出ても、点眼薬は今まで通りの本数をさし続けていただきます。

点眼薬によりアレルギーなどの副作用があり点眼継続が困難な場合。妊娠、授乳中で点眼の継続ができない場合

忘れっぽくなってしまい確実に毎日の点眼を継続できなくなった、点眼薬の使用感が辛い、そんな方も選択の1つとなります。

自分はSLTの適応か知りたい方は医師にご相談下さい。

レーザー治療自体は通常5~10分程度ででき、当日は激しい運動、長湯、飲酒は避けていただくぐらいで普通の生活が出来ます。翌日からは通常通りにお過ごしください。1~3日位頭痛を感じる方もいます。市販薬の頭痛薬を飲んで構いません。そのほか、一時的に眼圧が上がったり、かすんで見えたり眩しく感じたり充血することもありますが、症状は点眼投与により軽快し、一時的なものがほとんどです。

最後になりましたが緑内障は残念ながら治る疾患ではありません。進行を遅らせるために点眼やレーザー、手術を行います。レーザー治療後も眼圧の経過を確認するために定期的な通院診察は必要です。

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