「なんか最近、目がかすむ」
「まぶしくて、細かい文字が読みにくい」
そんなちょっとした見えづらさを感じたことはありませんか?実はそれ糖尿病が原因の目の病気のサインかもしれません。糖尿病というと血糖値や食事制限、腎臓機能の低下などに目が行きがちですが、目の病気【糖尿病網膜症】も大事な合併症の一つです。
ほっておくと、視力が下がったり、失明につながったりすることもあります。早く気づいて対策をすれば、視力を守ることは十分に可能です。
目が糖尿病でなぜ障害されるのでしょうか、それはカメラのフィルムに例えられる網膜にはたくさんの細かい血管があり、高血糖の影響がじわじわと現れてくるのです。糖尿病が長く続くと、血管がつまったり、もろくなり破れやすくなって、出血やむくみ、更には異常な新しい血管が出来てしまいます。新しい血管が出来るならいいじゃないかと思われがちですが、この新生血管、厄介者でもろく破れやすい上にできては困る所にまで進出します。
糖尿病網膜症は音もなく忍び寄ります。初期症状は全く症状が無く、目の中で出血やむくみが始まっていても自分では気が付くことが出来ないのです。そして怖いのは、症状を感じるのは病気がかなり進んでから、
「視界がかすむ」
「黒い点やごみのようなものが飛んで見える」
「視界の一部が見えない」
「急に視力が落ちた」
このような症状がでて慌てて眼科に来られる方も少なくありません。でも残念ながら視力が落ちてからでは、元に戻すのは難しいことが多いのです。
糖尿病網膜症は3つのステップで進行します。
・【単純網膜症(初期)】毛細血管が少しづつ傷つき、小さな出血やむくみが始まります。この段階ではほとんど症状を自覚できません。
・【増殖前網膜症(中期)】網膜の血管のつまりが目立ちはじめ、酸素や栄養が足りない部分が増えてきます。このころに視界のぼやけ等を感じ始めます。
・【増殖網膜症(進行期)】足りない酸素や栄養を補おうと、新しい血管(新生血管)を作ります。新生血管はもろく、大量に出血したり、増殖組織が出来て網膜がはがれたりすることがあり、視力が一気に落ちてしまいます。





OCTで網膜の断層写真も見てみましょう。
これは正常な網膜の断層写真です。中央のくぼんだ所は黄斑部で光が視神経細胞にダイレクトに当たるようにすり鉢状にくぼんでいます。網膜の断層も綺麗に層状になっていますね。黄斑はすり鉢状にくぼんでいるのが正常だという事を覚えていてから次の写真を見て下さい。

くぼんでいるはずの黄斑部を見て下さい。増殖糖尿病網膜症で糖尿病黄斑浮腫の状態です。
視力に一番大事な黄斑部がむくんで腫れている状態では、よく見えるはずがありません。
では、治療にはどんなものがあるのでしょう。基本は血糖のコントロールが重要です。血糖が安定すると、網膜症の進行を遅らせることが出来ます。網膜の症状に対しての治療は
≪レーザー治療(光凝固)≫ 血流が悪くなり酸素や栄養が足りなくなってしまっている部分にレーザーを当てて、病気の進行を抑えます。特に増殖網膜症では早めの治療が視力を守るカギになります。
≪硝子体注射(抗VEGF薬)≫ 新生血管やむくみに対しては目の中に注射をして、血管からの血液成分の漏出や出血を抑える治療が有効です。加齢黄斑変性症と同じような薬が使われます。
≪硝子体手術≫ 大量の出血や網膜剥離が起きた場合には、目の中の手術が必要になることがあります。
糖尿病網膜症は気が付いた時には手遅れになりやすい病気です。見えにくさに気が付いたらほって置かず早く受診して下さい、そして何より内科で糖尿病と診断されたときは、見えている今のうちから眼科に行き、目を守る習慣をつけて下さい。大切な目と、一生付き合っていくためにぜひ、今から始められることを始めましょう。