内科で糖尿病と診断されたとき、「目にも症状が出ることがあるから、眼科にも行ってくださいね」と言われたことはありませんか?けれど、「今は見えているし大丈夫」「今は忙しいから時間が出来たら・・・」とつい後回しにする方が多いようです。眼科に最初は通院していても、定期検診に来なくなる方も多いのが現実です。
でも、その【見えている今が一番大事な時期】なのです。
糖尿病になると、体の細い血管が少しずつダメージをうけていきます。その中でも特に影響を受けやすいのが、目の奥にある網膜です。網膜はカメラでいえばフィルムにあたる場所で光を感じて「見る」という情報を脳に送るとても大切な場所です。この大事な場所にある細い血管が、糖によって傷つき、詰まったり、破れたりして眼底出血してしまう病気が【糖尿病網膜症】です。
糖尿病は目の中の血管を静かに確実に傷付けるのです。
糖尿病網膜症は日本人の中途失明の主な原因の一つです。厚生労働省の調査によると、ここ数十年にわたり中途失明の原因の第2位または第3位を占めることが多いです。
特に働き盛世代で、糖尿病の治療を中断してしまった方や、眼科検診を受けなかった方に重い視力障害が出ることが多いです。糖尿病網膜症のいちばん怖いところは、【かなり進行するまでほとんど症状が出ない】ことです。自分ではよく見えているから問題ないだろうと思っていても、目の奥では出血していたりむくんでいたり、症状は静かに進行している場合があります。
失明を防ぐには【見えている今が勝負】です。この病気は早く見つけて、早く治療をすれば失明を防ぐことが出来る病気です。
現在では、進行を抑えるための治療法がたくさんあります。血管の異常やむくみを抑える硝子体注射、症状の進行を抑えるためのレーザ、硝子体出血や網膜剥離に対する手術、これらは病気が進み過ぎる前に始めてこそ効果が高いのです。
糖尿病と診断されたら症状が無くても、眼科の定期検診を受けることはとても大切です。検査は眼底検査という目の奥を診る簡単な検査で痛みはありません。眼底検査では詳しく眼の奥を診るために瞳孔を開く目薬をさします。車の運転や自転車の運転は5~6時間できなくなるので車や自転車での来院は控えて下さい。
あなたの目は、日々の生活の中でたくさんの景色を見せてくれます。家族の笑顔や、美しい景色、現実的には仕事で必要な書類や運転に必要な視力、それを守れるのは「今、眼科に行く」たった一つの行動かも知れません。
まだ見えてるからこそ、どうか眼科に行ってください。
大事な目、視力を守って下さい。
次回は糖尿病網膜症について書きたいと思います。